2020年、新型コロナウィルスの世界的パンデミックを受けて、経済界には大激震が走りました。
百年に一度どころか千年に一度と言っても過言ではない惨状を人類にもたらした中国武漢発の肺炎は、収束する気配は見えるものの、第二波あるいは第三波の襲来が想定されて予断を許さない状況にあります。
業種や業態の全体が被っている甚大な被害に対しては、個々の企業努力ではどうにもならない現状にあって、一時的とは言え全世界が防疫のための「鎖国」政策を取らざるを得なくなっています。

写真はイメージ(写真:アフロ)
衰退する航空業界
航空業界の国際線は9割以上の落ち込みとなって、日本航空や全日空をはじめLCC格安航空の各社とも赤字転落を余儀なくされました。
投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェット氏は、彼が率いるバークシャー・ハザウェイでの年次株主総会で、新型コロナウイルスの感染拡大によって「世界が変わる」として、保有していた米デルタ航空などの米航空株、ゴールドマン・サックス株と、バンク・オブ・アメリカやJPモルガン株、更に米大手地銀USバンコープ株といった金融株の大半を売却したことを公表したのです。
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金融業界のバブル崩壊
米国人投資家のウォーレン・バフェットは持ち株処分で航空産業ばかりか、金融株も手放しました。
直接的には新型コロナウィルスが引き金となって金融業界の含み益が減少して、含み損の増大となったことが原因なのですが、昨年までには既にGDPの増大に対して比べものにならないくらいの大幅なデリバティブ商品の拡大からバブルの再来となっていたので、「リーマンショックを超える経済危機」は既に始まっていたのです。
パンデミックによる経済崩壊を食い止めようと世界各国は大量の紙幣の増刷をしていて、米国や日本のような国際機軸通貨と見做されない、発展途上国や南米などの国々ではデフォルトの危機を抑えきれなくなります。
更にかつてのサブプライムローンの数十倍にも膨れ上がった、デリバティブ商品であるハイイールド債あるいはジャンク債の破綻が間近に迫っているので、米国FRBでさえも破綻のリスクに晒されているかも知れません。
昔、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という言葉がかつて流行ったことがありましたが、現在の日本は如何でしょうか?
就職人気企業とは?
今まではJALやANAは常に大学生の就職希望ランキングで上位に入っていましたが、今後の少なくとも数年は浮かび上がることは困難となるでしょう。
2019年9月20日~2020年2月19日を調査期間とする「楽天みん就」の「新卒就職人気企業ランキング調査概要」のベスト10は下記の表のとおりです。
順位 | 企業名 | 昨年順位 |
1位 | NTTデータ | 3位 |
2位 | 味の素 | 1位 |
3位 | 伊藤忠商事 | 2位 |
4位 | 花王 | 5位 |
5位 | 資生堂 | 6位 |
6位 | 全日本空輸(ANA) | 4位 |
7位 | サントリーホールディングス | 8位 |
8位 | アサヒビール | 11位 |
9位 | 集英社 | 14位 |
10位 | 日本航空(JAL) | 9位 |
これを見ると、新卒の学生たちは日本の航空機産業に対してまだ幻想を脱却できずにいることが分かります。
機長やクルーは管制塔と英語でやりとりをするし、CAは美人で笑顔が魅力的な、ようするに格好の良い職業なわけです。
前年度より多少は人気が下降したとはいえ、相変わらずベスト10の6位と10位に入っているのです。
しかし、ウォーレン・バフェットによると既に航空機業界は凋落の真っ只中にあって、少なくとも投資家目線からは損切りの対象でしかありません。
国際化と英語力
諸外国との交流が盛んに行われて来たことから、卓越した語学力が就職の条件として、人気3位の伊藤忠商事などの商社では求められていました。
特に英語力は必須で、日本では伝統のある英検の他に、TOEFLやIELTS、ケンブリッジ英検やTOEIC、あるいはSATという具合に試験はデパートのごとくに乱立しており、業種に関係なく大半のサラリーマンは必死に勉強をさせられています。
これらは全て我が国が国際化の波を被ったことの現れですが、日常会話程度のやりとりだけならばAIの進歩も著しく、続々と商品化が進められていますので、ほとんど同時通訳者を同行させているのと変わりません。
ポケトークの衝撃
様々な翻訳ソフトが発売されている中で脚光を浴びているのが「ポケトーク」です。
ポケトークは、55言語で音声とテキスト即時翻訳が可能で、「カメラ搭載、名刺サイズ 旅にも、語学学習にも新しいポケトーク S」と謳われているように、その性能が時間と共にアップしていく優れものとなっています。
将来的には国際会議場で同時通訳者を置かなくても済むようになるでしょうし、電話での応答まで日本語で同時通訳をしてくれるようになることが期待されます。
変化するアフターコロナの就業スタイル
新型コロナウィルスは航空業界にとどまらず、人と人との接触によって成り立っていた営業部門や歓楽産業などの全てに打撃となりました。
実施が推奨されるテレワークでは営業マンは不必要で、SNSによって代えられているのです。
また、芸能人も今までのようにマスメディアや演劇現場を使って高収入を得ることは難しくなり、ユーチューブやインスタグラムなどのネットメディアによって個別に情報発信しなければならなくなりました。
ネット空間では素人とプロフェッショナルとの境界線は混濁していますし、バズった反応が即時に現れるので、今までのマスメディアのように世論誘導はし難くなります。
これらの事実は、第一次産業と第二次産業においてロボット化が益々進んで行き、第三次産業でもサービス業全般にネットワーク化を推進せざるを得なくなったことを意味しています。
更に、予想される継続した大量の失業者に対しての社会保障給付金の支給は底を突く恐れが指摘されて、複雑化した失業保険制度や生活保護制度の見直しも不可欠となっています。
同じような仕事をしていながら給料が一銭も減らない公務員に対して、生命の危険さえも急激に襲い掛かって来ている民間企業の社員との社会的平等が叫ばれるのは当たり前でしょう。
全国民の生存権を保証するベーシックインカムの導入を実施するのは現在の状況を措いて他に無いのではと考えられます。