ダイヤモンド、水晶、あるいはアメジスト等のいわゆる宝石類は古代メソポタミア文明やエジプト文明から呪術の道具として、あるいは魔術や毒を防ぐ力を持つものとして宗教的儀式にも使われて来ました。
エジプト文明ではツタンカーメン黄金のマスクに青いラピスラズリが飾られており、当時は金よりも高価であったと言われております。
日本でも縄文時代の昔には翡翠(ヒスイ)が霊力の宿る石として考えられており、天皇家の伝承としての「三種の神器」の一つである「八坂瓊勾玉(やさかにのまがたま)」も翡翠で出来ていました。
翡翠は日本鉱物化学会により「日本の国石」として認定されています。
このような宝石類が宗教的でオカルト的発想から使われていたのも歴史的事実ですが、時間の経過によって価値を失わないという無機質な「石(ストーン)」の性格があったために、永続する「美」が女性のアクセサリーとしてセレブたちの心を捉えて現代に至りました。
パワーストーンとしての価値の再発見をする宝石類
宝石商人によって商品化された宝石類が変わらぬ「美しさ」の象徴として世界中に伝搬していきましたが、単なる装飾品としての価値から古来からのオカルト的価値を再発見するものとして「パワーストーン」と呼ばれ始めたのは、実は日本からであり、1980年代後期以降ニューエイジムーブメントが日本に流入したのを契機とします。
パワーストーンという言葉が世間的に知られるきっかけを作ったのは故・マギー (占術研究家)の著書「パワーストーンの不思議」(初版1992年9月)が最初とされており、純然たる和製英語です。
英語圏では鉱物結晶を意味する「Crystal(クリスタル)」や、天然石を意味する「Gemstone(ジェムストーン)」が一般的な表現で、実際に英米人に試してみないと分かりませんが、「パワーストーン」は日本人にしか通用しないはずです。
パワーストーンの種類はどれくらいあるのか?
宝石類の全てがパワーストーンと看做せますので、その種類は数百に上り、全部に対してパワーストーンとしての意味を定義付けるのは骨折り損のくたびれ儲けとなります。
人類が数千年に及ぶ歴史の中で、徐々に誰に対してもパワーストーンとしての効果が表れるものが幾つかに絞られてまいりました。
特に占星術と連動する形で12サインに分類される、いわゆる誕生石と称せられる宝石です。
パワーストーンのエッセンスとしての誕生石
おおむね1月から12月までの生まれ月、正確には占星術の星座(サイン)に基づいて、推奨すべき宝石が決まっています。
それぞれに特徴的な「意味合い」が存在していますので、見て参りましょう。
1月の誕生石 ガーネット
意味・効果は生命力・情熱・実りを象徴し、別名「勝利の石」あるいは「情熱の石」と呼ばれており、「信頼と愛の石」としてロマンティックな伝承が残されています。
2月の誕生石 アメジスト
意味・効果は良縁・精神安定・魔除け祈願の石とされており、「愛の守護石」と呼ばれています。
3月の誕生石 アクアマリン
意味・効果は幸福・結婚祈願、人間関係円満を象徴、古代ローマでは漁夫たちが「海難防止と豊漁の石」としてお守りにしていました。
3月の誕生石 コーラル
意味・効果はコーラルという「さんご」の発音から連想するように、順調な出産や産後の回復であり、血行の促進と潜在能力の開発とされています。
4月の誕生石 クォーツ (水晶・すいしょう)
意味・効果は全ての事象に対応する万能のパワーストーンと言われており、潜在的な能力やパワーを引き出してくれます。
5月の誕生石 エメラルド
意味・効果は叡智を象徴しており、目標や夢の実現に万能の力を発揮します。
5月の誕生石 ジェダイト (ビルマ翡翠・ひすい)
意味・効果は和名の「翡翠」が鳥のカワセミを意味するように、豊かな森や農作物を象徴して、古くから自然崇拝と関連する「奇跡の石」と呼ばれています。
6月の誕生石 パール
意味・効果は「美と健康」であり、強い保護力で悪霊から身を守ってくれる他、お産を軽くする効果もあります。
6月の誕生石 ムーンストーン
意味・効果は感情が満ち欠けする「女性」を象徴しており、情緒を安定させる働きがあって、特に女性に対して効き目があります。
7月の誕生石 ルビー
意味・効果は健康・富・知恵・恋の成就を象徴しており、どんな不利な条件でも風向きを変えて有利に働きます。
7月の誕生石 アゲート(瑪瑙・めのう)
意味・効果は家族の絆を象徴しており、家庭内のいざこざを防ぎ、親子・兄弟を深い愛の絆で結びつける力があると信じられています。
8月の誕生石 ペリドット
意味・効果は古代の人々からは『太陽が爆発して飛んできた石』や『太陽の石』として崇拝されており、社交性やリーダーシップを養うので、人の輪の中心的存在になりたいという人にお勧めです。
8月の誕生石 オニキス
意味・効果は肉体の内側の本能を目覚めさせ、運動能力を刺激して向上させる力があるとされており、「悪霊から身を守る石」として厄除けお守り効果が期待されます。
9月の誕生石 サファイア
意味・効果は永遠の真理を追究する学問の石とされており、スポーツ選手などチームプレイを重視しなければならない職業の方にお勧めです。
9月の誕生石 ラピスラズリ
意味・効果は洞察力や決断力を高め、心の邪念を取り除き幸運と成功をもたらす力があるとされ、ラズライト、アウィン、ソーダライト、ノーゼライトの4種類の鉱物が混ざった石として美しい青色を醸し出しています。日本では「瑠璃」とよばれて、仏教の世界では七宝(金・銀・瑠璃・珊瑚・琥珀・シャコ・瑪瑙)のひとつに数えられる「聖なる石」とされます。
10月の誕生石 オパール
意味・効果は新しい出会いと恋の成功をもたらし、幸せな結婚と子宝を与えてくれると言われています。
10月の誕生石 トルマリン
意味・効果はカラーによってパワーが異なります。
ピンクや赤のトルマリンは、恋愛に優れた効果を発揮し、友情から愛へ発展したいときの力となり、
ブルーのトルマリンは頭脳を活性化しポジティブな思考に導き、
グリーンのトルマリンは、人類愛や地球、生命への賛歌をささやくシンギングストーンで、
イエローのトルマリンは、食欲を増進させ、自己実現力や意欲をもたらし、
ブラックのトルマリンは、免疫力を高める健康効果で話題になりました。
11月の誕生石 トパーズ
意味・効果は持つ人の魅力やスピリチュアルな能力を引き出すことが出来、周囲に自分を認めさせる力があると言われています。
11月の誕生石 シトリン(黄水晶・きすいしょう)
意味・効果は商売繁栄の富をもたらすと言われており、潜在能力の引き出しとストレスから解放させる力を発揮します。
12月の誕生石 ターコイズ (トルコ石)
意味・効果は勇気と行動力、積極性を象徴しており、強力な守護パワーで邪悪なものから身を守る力があると言われ、「旅の守護石」とも称されます。
12月の誕生石 タンザナイト
意味・効果はスピリチャルな力が強く、願いを叶える石といわれており、ワーカホリック依存症などから解放してくれて、自分のペースと意思で進んでいけるように手助けしてくれます。
パワーストーンは形を変えた現代の魔術か?
数多いパワーストーンの中から自身が本当に必要な天然石(ジェムストーン)を見出すことは大変難しいのですが、誕生石で決めて保有するのもアリではないかと思います。
「鰯の頭も信心から」という格言がありますが、およそ全ての宗教やスピリチュアルなグループなども同じことが言えるのではないでしょうか。
共産主義中国では宗教を「民衆のアヘン」として認識していますので、スピリチュアルな話題などもタブーとなっているようですが、太古からの人類の歴史において魔術と宗教は切り離すことは出来ません。
パワーストーンは科学万能な現代においても清涼剤としての役割を果たし、文化を色付けてくれる調味料の一つとなっているのです。